著者
遠藤 俊郎 星山 謙治 安田 貢 斉藤 由美
出版者
山梨大学
雑誌
教育実践学研究 : 山梨大学教育学部附属教育実践研究指導センター研究紀要 (ISSN:13454161)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.25-34, 2007

本研究は、児童遊びの実態と共に心理的発達に与える影響を、特に攻撃性・社会性に着目して検討することを目的とした。今日、児童による暴力、犯罪などの様々な問題が増え、深刻化されている現代社会において、児童の実態を見直す必要性がある。特に児童の遊びが変容しているといわれる中で、その遊びの変容が児童の心理的発達にどのように影響を与えているかに焦点を当てた。現代の児童の生活実態を把握することで、学校教育における児童理解の一参考になると期待される。児童は、主として外遊びよりも内遊び(室内遊び) を好み、遊ぶ集団の人数も少数化しているという現状が見受けられた。テレビゲームやマンガを読むといった一人で行なう内遊びをする児童が多くなっていることも特徴として挙げられる。また、内遊びは児童の攻撃性を高める傾向が、外遊びは社会性を高めるという結果が示された。
著者
谷口 明子
出版者
山梨大学
雑誌
教育実践学研究 : 山梨大学教育学部附属教育実践研究指導センター研究紀要 (ISSN:13454161)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.193-202, 2010

統計的にはいじめ発生件数が減少しているとはいえ、いじめが看過できない教育上の課題であることは変わらない。いじめ深刻化の背景にはいじめの潜在化があると言われるが、その要因のひとつに中学生のいじめ認識のゆがみがあるのではないかと考えられる。そこで、本研究においては、いじめが最も深刻である中学1、2年生を対象として、どのような行為を「いじめ」と認識しているのか、またそうした認識はいじめ経験の有無と関連があるのかどうかを質問紙調査によって検討した。結果として、衝動的暴力や遊び型のいじめ行為に対しては、それが「いじめである」という認識が低く、さらにそうした遊び型いじめに関しては、被害経験のある生徒でさえ「いじめではない」との認識があることが明らかになった。中学校におけるいじめ防止を考える際に、こうしたいじめへの認識のずれに焦点をあてた対応が望まれる。
著者
大森 竹仁 林 尚示
出版者
山梨大学
雑誌
教育実践学研究 : 山梨大学教育学部附属教育実践研究指導センター研究紀要 (ISSN:13454161)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.95-104, 2005

本研究は,生徒会活動を通して集団づくりをすることを目指す一連の中で,特にリーダーの資質について検討したものである。具体的には,大学の学生及び中学校の生徒,並びに中学校の生徒会主任教師を対象とした調査を実施し,その結果をもとにリーダーの資質として重視されている内容を明確化した。この作業により,特別活動で望ましい集団活動を通して人間形成をしていくために,特に特別活動の中での生徒会活動の果す役割が明確化してくる。更には,リーダーの資質に焦点化して研究を進めることにより,今後の学校教育の中で,生徒会活動の教育的効果や教育的価値の再確認に繋がる成果が期待できる。
著者
小島 千か
出版者
山梨大学
雑誌
教育実践学研究 : 山梨大学教育学部附属教育実践研究指導センター研究紀要 (ISSN:13454161)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.1-12, 2007

絵本に音楽を付ける活動を「音楽理論及び演習II」の授業で行い、出来た作品を有志の学生が子ども図書室において子ども達の前で発表した。その発表作品の内容から、絵本に音楽を付ける活動は、レベルの違いはあるものの、小学校音楽科の音楽づくりでも行われるイメージを音にする活動と同様の内容であり、今後も続ける必要性を感じた。今回の発表作品は、「テーマとなる一つのメロディーを作り、そのメロディーを絵本の登場物のイメージに合わせて変化させる」、「絵本の登場物や場面をイメージさせるような音楽や音を演奏する」のどちらか又は両方を用いて音楽が付けられていることが明らかになった。そこでこの方法で絵本に音楽を付ける活動をするにあたって、授業における今後の課題を示した。更に、音・形・色・動きの関わりとイメージについての考察も今後の課題となった。
著者
植屋 清見 山田 直弘 澤邊 直人 小町 昂史 比留間 浩介
出版者
山梨大学
雑誌
教育実践学研究 : 山梨大学教育学部附属教育実践研究指導センター研究紀要 (ISSN:13454161)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.72-83, 2009

初等体育科教育学は本学教育人間科学部にあっては将来,小学校の教師を目指す学生にとって小学校教諭普通免許1種の必修科目であり,本授業の単位取得なしでは教員免許はおろか卒業も不可能となる重要な科目である。そのような重要度の高い授業でありながら,実際の授業は半期完結制のもと,僅か15回の授業で終了してしまう。本学においてはこの15回の授業をボール運動と陸上運動の指導に当てている。それ故,陸上運動に使える回数は僅かに7回程度である。本研究は僅か7回しか使えない授業にあって,受講生が将来小学校の教師となったときに,走り高跳びの指導が可能になって欲しいと願って行われている授業である。本研究においては小学校体育の陸上運動の一つの種目である走り高跳びを取り上げ,如何にして受講生の走り高跳びへの興味関心を引き出し,彼らの走り高跳びに関する指導力(知識,経験,実技能力,師範能力等)を育成するかを命題に行われる実践報告的論文である。具体的には小学校体育における走り高跳びの目標の" 記録向上"を求めるのではなく,小学生には危険な跳躍法とされているベリーロールや背面跳びをクリアランス後のセーフティ・マットへの落下の気持ちよさを実感し,また果たして,ベリーロールや背面跳びは小学生にとって危険な跳躍法といえるのかの回答を得る授業として行われる。結論的にはベリーロールや背面跳びは必ずしも小学生にとって危険な跳躍法ではないとする回答が多数であった。加えて,このような指導を通して,受講生の体育の授業に対する態度(喜び・評価・価値)得点は有意に高まっている実態も確認された。尚,本研究の検討の対象の授業は2002 年から2008 年の前期までであった。
著者
加藤 一 林 尚示 成田 雅博
出版者
山梨大学
雑誌
教育実践学研究 : 山梨大学教育学部附属教育実践研究指導センター研究紀要 (ISSN:13454161)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.47-56, 2003

本稿では,文部科学省における生涯学習への通信衛星を利用した研究の取り組みである「教育情報衛星通信ネットワーク高度化推進事業」,エル・ネット「オープンカレッジ」講座の本学における大学独自収録・編集作業の準備及び実施の概要について述べている。この収録のために発足させた「山梨大学独自収録事業協議会」が,番組収録,番組編集,テキスト原稿作成を実施した。制作した番組は日本全国のエル・ネット受信施設に滞りなく放送され,生涯学習の推進に寄与することができた。
著者
遠藤 俊郎 下川 浩一 安田 貢 布施 洋 袴田 敦士 伊藤 潤二
出版者
山梨大学
雑誌
教育実践学研究 : 山梨大学教育学部附属教育実践研究指導センター研究紀要 (ISSN:13454161)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.84-94, 2009

本研究では,大学における運動部活動(バレーボール) の練習場面における現代の集団規範の実態を把握するとともに,競技水準によってどのような違いがあるかを明らかにし今後のコーチングに役立てるための一資料にする。また,10 年前の選手の集団規範と比較することによって今日の選手の特徴を明確にすることを目的とした。その結果,男子における集団規範下位尺度得点において,競技水準の高いチームに所属している選手が競技水準の低いチームに所属している選手に対してすべての下位尺度得点で高い値を示した。男子における社会的アイデンティティ各項目得点においては,競技水準の高いチームに所属している選手が競技水準の低いチームに所属している選手よりも高い評価が得られた。このことから,男子において競技水準が高いほうが集団帰属意識は強く,規範も厳しいことが示唆された。また,90 年代と現代の集団規範の比較においては,「現代の選手」が3 つの下位尺度得点(態度規範・上下序列規範・奉仕規範)で高い値を示した。このことから「現代の選手」において規範に対する耐性が低下している可能性があることが示唆された。
著者
堀 哲夫
出版者
山梨大学
雑誌
教育実践学研究 : 山梨大学教育学部附属教育実践研究指導センター研究紀要 (ISSN:13454161)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.64-71, 2009

近年,大学における授業改善に対する関心は高まりつつあるが,具体的にどのような方法で行ったらよいのか,明確な提案がない.本研究では,大学の講義の中で,毎時間学習した最重要事項を学生に書かせ,自分自身の学習履歴をふり返らせ学ぶ意味を伝えるというOPPA(One Page Portfolio Assessment:一枚ポートフォリオ評価)を採用し,実践を行ってみた。OPPA の内容を確認することにより,教師自身は,自らの授業が適切であったのか否かを判断できる。その結果,学生は授業内容の最重要事項は何かを考えながら受講するようになる,受講内容の意味を明確にすることができる,授業評価が可能になるなどの効果を確認できた。しかし,講義時間が長い場合には最も重要なことが不明確になるなどの課題も明らかになった。
著者
榊原 禎宏 大和 真希子
出版者
山梨大学
雑誌
教育実践学研究 : 山梨大学教育学部附属教育実践研究指導センター研究紀要 (ISSN:13454161)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.43-56, 2001

本論文は,教育学領域での教員研修が持つべき条件についての提案とその根拠を授業者,観察者,受講者の3つの角度から提示している。つまり,1.研修では,受講者に多くの気づき,振り返りをもたらすコミュニケーション・チャンネル,対話を促す課題とメディアを用意すること,2.授業者は,受講者がすでに持つ経験や論理を引き出し,それを相対化させる促進者として位置づくこと,またこのための進行役・演技者としての準備,資質・能力が必要なこと,3.受講者にコミュニケーション・スキルを改善する必要性に気づかせ,学校でもリフレクションの機会,そして教師自らが学び,発案する機会をもつように方向づけること,4.そして,授業者は説教や啓蒙としては教えないが,受講者に異なる認識枠を示し,既存の枠組みを疑う材料を提供する,また彼らに問い,困惑,さらに楽しませ,そして表現,提案させる等の点で,すぐれて意図的な教育行為を担うことが重要なこと,を指摘している。
著者
中国 昭彦 堀 哲夫
出版者
山梨大学
雑誌
教育実践学研究 : 山梨大学教育学部附属教育実践研究指導センター研究紀要 (ISSN:13454161)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.1-19, 2010

2008 年学習指導要領が改訂され,思考力や表現力等,児童生徒の資質・能力の育成が改訂のポイントのひとつとなっている。中教審答申では,特別活動や総合の学習の時間において体験活動を充実させることで,資質・能力の育成をすることが強く求められている。これまで特別活動や総合的な学習の時間において,資質・能力を育成するために一枚の用紙のみを用いたOPP(One Page Portfolio) シートを活用した研究は,ほとんど提案されていない。そこで,本研究では児童が生きる力を身につけていくために,総合的な学習の時間「私たちの祇園祭を伝えよう」の単元において,資質・能力を育成するための手立てとしてOPP シートを活用した授業づくりに取り組んできた。その結果,本研究を通してOPP シートを活用することにより,資質・能力の育成や体験活動の充実が効果的に図れることを児童の記述内容から確かめることができた。
著者
金丸 学 古屋 義博 渡邊 恒子
出版者
山梨大学
雑誌
教育実践学研究 : 山梨大学教育学部附属教育実践研究指導センター研究紀要 (ISSN:13454161)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.23-32, 2001

学校で児童達は,授業環境との相互作用の中で学習を進める。知的障害養護学校に在籍する児童の実態は多様である。教師が予測しない行為を児童が授業の中で示すことがある。この原因を児童に帰属させず,「授業への参加を促すためのアフォーダンスを教師が授業環境に適切に配置できなかった」という視点を我々は持つことにした。この視点から授業(全6回)を計画・実施し,分析した。結果,教師が配置したアフォーダンスと児童が知覚したアフォーダンスとはしばしば一致しないこと,各児童が知覚するアフォーダンスはそれぞれ異なる可能性が高いこと,それらの不一致は教師の工夫により小さくできることなどを確かめた。以上より,知的障害養護学校においてより良い授業づくりをするための一助として,アフォーダンスという理論的枠組みから検討する意義を認めた。